放置車両の撤去システムがあれば、いつ発生・再発しても、迅速な対応が可能になります。しかも無料で構築出来るので、時間があるとき、本記事の内容を確認しながら準備することが可能です。放置車両への対応で課題となるのは以下の6点です。
- 放置車両と断定する条件と時期
- 所有者の特定
- 対処方式の選定
- 継続的な警告と記録の実施
- 法的措置の必要性の判断
- 車両の撤去
放置車両は、複数の種類に分けることができ、更に所有者の特定状況や撤去許諾によって法的措置を準備・実行するかといった具合に条件分岐させてあみだくじ式に、その時々の最適解を選択することが可能です。
自社で放置車両の撤去システムを構築する場合、最も大きな課題となるのは、『所有者が海外出張中』『所有者と連絡が取れたり取れなかったりする』『所有者が不明』といった状況が挙げられます。ただし、そのような場合に置いても、多くの場合、撤去業者・行政書士・弁護士などと連携して車両を移動させることが可能なのでシステム構築は『迅速な撤去の実現』に貢献することが出来る場合があるのです。
放置車両の撤去システムとは?
本記事で紹介する『放置車両の撤去システム』は、新たなソフトウエア開発ではなく、被害状況の適切な判断をするためのチェックシート、いざという時に連携できる専門家の確保、会社や個人単位で活用できる行動マニュアルの整備で構築が可能です。
チェックシートについて
チェックシートは、「放置車両の状況把握シート」「現場保存及び記録シート」「タスク管理シート」の3種類を準備することを基本とお考えください。それぞれ利用目的が異なるので、順を追って説明していきます。
放置車両の状況把握シート
初期対応を始める前、「事件性の有無を確認(警察へ通報)」「いつから放置されているのか」「どこに放置されているか」「所有者は誰か、放置した者と一致するか否か」「メーカー/車種/色など特徴の記録」「なぜ放置されているのか(理由)」「どのようにして敷地内に投棄されたのか」などといった重要情報を、システム的にまとめ上げ、初動をスムーズにするために作成します。
作成のポイントは「5W1H」を明確にすることです。【5W1H】When: いつ / Where: どこで / Who: だれが / What: 何を / Why: なぜ / How: どのように。
現場保存及び記録シート
警察へ通報後、警察官による車両照会で「盗難車や事件絡みの車両ではない」と判断された場合、警察は民事不介入なので直接対処できなくなります。その段階からは、所有者による引き取りや、業者を介しての撤去作業へ向けた『状況証拠整理』のための現場保存との記録が大切になるので作成して、日々の状況を記録していきます。
本シートで積み上げた状況証拠が、最終的に撤去移動の実現に貢献するため、面倒でも地道にチェック作業を行うことが対応工数や期間短縮につながります。
タスク管理シート
放置車両の発生が発覚した段階での写真撮影と記録作成、警察への通報、警告文貼り付け、日々の写真撮影と状況の記録、業者との相談履歴の管理などのタスクを管理する目的と用途で作成します。様式は自由ですが、「いつ、誰が記録したのか」が明確になるような書式として、記入は水性のボールペンで手書きを推奨。
防犯カメラ映像がある場合、日時が表示されている映像をDVD/SDカード/USBメモリ等の記録媒体に保存して、証拠として保管するタスクも設定することで記録の信憑性を高めることができます。
【注意点】車両を放置した人物には、所有権以外に人権がありますので、取得した記録や個人情報の取り扱いには十分な注意が必要ですので、厳重に保管するようにしましょう。
撤去システム構築時に必要な外部連携先
放置車両の撤去システム構築には、法的に問題なく、同一所有者や不法投棄実行者本人による再発防止までを見据えた対応が不可欠です。特に商業利用施設の場合、敷地に求められている本来の役割に影響が及び、施設の収益性を低下させているため迅速かつ的確な対応が必要です。
下記、必要な外部連携先。
- 実績豊富な撤去業者
- 行政書士や弁護士
放置された側が法人の場合、顧問弁護士や契約中の行政書士がいることもあるでしょう。また、社内に法務部門を有する組織なら、社内リソースで賄うこともできます。
一方で、小規模事業者や個人(事業主含む)の場合、コストは最小限に抑え、スポット的に相談や依頼ができる必要があるので、事前に相談相手を決めておきましょう。
最低限、一度は電話や対面で連絡した実績のある放置車両撤去業者をつくり、もしも事態が発生した場合に必要なサポートを受けられるようにしておきましょう。特に、下記が重要な把握事項です。
- 定休日と対応可能時間帯
- 法的対応の可否
- 事業者登録の有無
- 費用
特に、法的対応の可否の部分では、いざというときに業者経由でも相談ができる法律家がいるかなので安心感や適格性が高まります。また、放置車両の撤去では、大半の場合「車両の処分」が必要になるため、古物商番号と引取業番号の取得ができている正規事業者である必要があります。
放置車両の撤去を単純なレッカー移動で行えるのは、公道や特定の条例などが適用される公益施設等であり、あくまでも一時的な無断駐車や不法駐車車両が対象。多くは意図的な不法投棄なので、古物商や引取業の登録が必要となり、機材維持や移動経費、人件費などが書かせないので、無料で撤去するなど甘い言葉にはご注意ください。
一部、本当に無料で対応している業者さんもいらっしゃいます。しかし、金銭授受は契約のひとつなので、責任の所在を明確にする意味でも、たとえ少額でも有償サービスとして利用可能な撤去業者を推奨しています。(法律家の方は別です。)
放置車両の撤去システム構築の時期
放置車両の撤去システムを構築する時期は、はじめて対応するタイミング若しくは、社内体制構築を決め段階からです。私たち、ヒキトリレンジャーの経験上、コインパーキングや商業施設運営会社の場合、担当者が変更となったタイミングで煩雑な放置車両対応業務をマニュアル化するケースが見受けられます。
特に、チェーン展開している事業者、多店舗展開している事業者の場合、放置される理由や現場の状況が多様化しがちなことからマニュアル化が難しいという声を耳にします。
そのような場合は、下のバナーから当社が企画・制作・無償配布している「放置車両撤去ガイド」を骨子としてご活用ください。
重要なのは「担当者による手順の理解」です!
私たちのように、放置車両の撤去をしている業者には、初期段階から沢山の相談をいただきます。しかし、その多くが「数ヶ月経過後」や「数年経過した状態」であり、所有者特定や連絡取り付けが困難になりつつある時期なのです。
多くの場合、撤去作業実施に漕ぎ着けられてはいますが、長期化するほど敷地の美観・収益性・利用者からの評判に悪影響が及ぶことが考えられます。
このような現状を少しでも改善するため、まずは、放置車両撤去の手順について、担当者様が概略的にでも理解しておくことが初動を早めることに繋がります。
全ての状況に対応することは難しくても、放置車両問題をシステマティックに対応するためのシステム構築の要は「人」です!ぜひ、無料ダウンロードして、周囲の方へ共有しつつご活用いただけましたら幸いです。
まとめ
ここまで解説した通り、放置車両の撤去システムを構築することで、初動を早め、結果的には敷地を原状回復するまでにかかる期間を短縮できるようになります。もちろん、そう簡単にいかない場合もありますが、条件分岐させながら対処の方向性を絞り込むことができるでしょう。
所有者が特定できない場合、所有者が頑なに対応しない場合、内容証明書の送付や簡易裁判所に訴えを起こす方法へ移行することもあります。
そのような最終手段も、ステップ・バイ・ステップで、適法な手順を踏むことで、「勝手に撤去したことになってしまい、逆に訴えられる。」などの余計な不利益を被るリスクを低減することにつながります。
状況を的確に判断し、適宜、放置車両撤去業者・行政書士・弁護士などを上手に活用しながら、社内体制やマニュアルとして、自社に合ったシステム構築をして備えておきましょう。
放置車両対応は、「放置理由の確認」「自力救済禁止の原則」「(警察の)民事不介入の原則」が、初動を遅らせる要因となることが多く、長期化するほどに撤去が困難になりますのでシステマティックに行動することが重要です。