放置車両(放置自動車)とは、運転者が車から離れていて、すぐには動かせない状態で置かれている車のことです。じつは道路交通法にこの言葉の定義があり、そこでいう放置車両は公道の駐車違反を指します。一方、私有地に置き去りにされた車も日常的には放置車両と呼ばれますが、こちらは原則として法律上の「放置車両」にはあたらず、警察の取り締まりの対象にもなりません。同じ言葉でも、誰が動くのかがまったく変わります。
この記事では、まず条文で言葉の意味を確認します。そのうえで私有地と公道で打つ手がどう分かれるのか、放置された背景による11の種類、場所ごとの対処法、警察はどこまで対応するのかを順に整理します。最後に、勝手に撤去するとどんな責任を問われるおそれがあるのかまで踏み込みます。放置車両の撤去を請け負っている立場から、現場で実際に効いた順序で並べました。
補足
駐車違反で「放置車両確認標章」を貼られたという人は、放置車両確認標章の意味と対策と違反金・点数を抑える方法の記事を用意しています。この記事で扱うのは私有地に置き去りにされた車のほうなので、混同せずにお読みください。
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放置車両とは?
放置車両は、違法駐車のうち運転者がその場を離れている車のことで、一般的な違法駐車とは扱いが異なります。社会問題化してテレビ特番などでも紹介される放置車両。ここでは、実際に警察署やNEXCO各社をはじめ、駐車場管理会社や不動産会社からも放置車両の撤去を依頼されている当社に多く寄せられる放置車両の状況を交えながら解説します。
道路交通法が定める「放置車両」の定義
「放置車両」は、法律に定義のある言葉です。道路交通法51条の4第1項は、違法駐車と認められる場合における車両のうち、その運転者がこれを離れて直ちに運転することができない状態にあるものを「放置車両」と定めています。
注意したいのは、条文に「何日以上」「何時間以上」という基準が書かれていない点です。判断の分かれ目は駐車時間の長さではなく、運転者がその場を離れていて、すぐには動かせない状態かどうかです。短時間でも運転者が離れていれば該当し、長く停まっていても運転者がそばにいれば該当しません。
そしてこの定義は、駐車監視員や警察官が違法駐車を確認して標章を取り付けるための規定の中にあります。つまり法律上の「放置車両」は、もともと公道の駐車違反を取り締まるための言葉です。
出典:e-Gov法令検索 道路交通法(第51条の4第1項)。2026年9月7日確認。
私有地に置かれた車は、原則として法律上の「放置車両」にはあたらない
道路交通法がいう「道路」は、道路法上の道路、道路運送法上の自動車道、および一般交通の用に供するその他の場所です(同法2条1項1号)。不特定多数が自由に通行するわけではない私有地は、原則としてここに含まれません。
出典:e-Gov法令検索 道路交通法(第2条第1項第1号)。2026年9月7日確認。
そのため、月極駐車場やアパートの敷地、資材置き場などに置き去りにされた車は、駐車違反として取り締まられることがなく、放置車両確認標章も貼られません。放置違反金の対象にもなりません。「警察に通報すれば持っていってくれる」と思って連絡しても車が消えないのは、このためです。
※ 私有地であっても、誰でも自由に出入りできる状態であれば道路交通法上の「道路」として扱われることがあります。自分の土地がどちらにあたるかは、所轄の警察署に確認してください。
ただしこれは「泣き寝入りするしかない」という意味ではありません。私有地の放置車両は、警察が取り締まる問題から、土地の所有者が民事の手続きで解決する問題に変わるというだけです。ここを最初に押さえておくと、遠回りをせずに済みます。
放置車両・違法駐車・無断駐車・不法投棄はどう違うのか
| 言葉 | 何を指すか | 主に動く相手 |
|---|---|---|
| 放置車両 (道路交通法) | 公道で、運転者が離れていてすぐに動かせない状態の違法駐車の車 | 警察・駐車監視員・公安委員会 |
| 違法駐車 | 公道の駐停車禁止場所などに停めること。運転者がそばにいる場合も含む | 警察 |
| 無断駐車 | 私有地に許可なく停めること。短時間でも該当する | 土地の所有者・管理者(民事) |
| 放置自動車・不法投棄 | 所有者が手放すつもりで置き去りにした車 | 公道・公共用地なら道路管理者や自治体、私有地なら土地の所有者 |
現場では、この4つが混ざったまま相談をいただくことがほとんどです。どれにあたるかで連絡先も費用の負担者も変わるので、まず公道なのか私有地なのかを確認してください。違法駐車と放置車両の違いは、別の記事でさらに細かく整理しています。
実際に寄せられる相談
このように、ご相談の多くは公道ではなく私道や私有地に置かれた車です。ご相談をいただくのは、個人/法人/各種機関からで、所有者へ連絡をしても一向に引取りに来ない人や、未払いの駐車場代金を踏み倒す人までいます。
放置車両は、状況によって有効な対処法が変わります。場数を踏んでいないと、撤去までに時間とお金がかかることもあります。
個人の方へ
放置した人と直接やり取りすると、トラブルになることがあります。相手に連絡する前に、警察や専門家に相談してください。
私有地か公道かで、動く相手も打つ手も変わる
日常生活で「放置車両」と呼ばれているものは、置かれた場所によって二つに分かれます。ひとつは公道や公共施設に停められた車で、警察官や、警察署長から委託を受けた法人(公安委員会に登録された法人)の駐車監視員が『駐車違反』として取り締まります。もうひとつが私有地に置き去りにされた車で、こちらは警察の責務の範囲から外れるため、土地の所有者が民事で動くことになります。
ネット上で「放置車両」と検索すると、この重要な点が書かれていないことがあり、誰に問い合わせていいのかがわからなくなるので注意が必要です。
基本的には、両方とも警察には連絡しますが、私有地の場合、実際に対応するのはご自身・業者・弁護士や行政書士などです。
公道に放置された車は、道路管理者が動かせる
公道の場合、物件をみだりに積んだり置いたりして交通の支障になる行為は、道路法43条2号で禁じられています。道路管理者(国・都道府県・市区町村)は、これに違反して置かれた物件について除却などを命じることができます(同法71条1項)。さらに、命ずべき相手が過失なく分からないときは、あらかじめ公告したうえで道路管理者自身が措置をとることができます(同法71条3項)。自治体が放置自動車を撤去できるのは、こうした法律や、自治体ごとの条例があるためです。
出典:e-Gov法令検索 道路法(第43条・第71条)。2026年9月7日確認。
私有地に放置された車は、土地の所有者が動くしかない
私有地には、この仕組みがありません。自分の土地に他人の車が置かれている状態は、土地の所有権が妨げられている状態です(民法206条)。これを取り除くよう求めるのは所有者自身が民事で行うことになります。警察も自治体も、代わりに動いてはくれません。
| 公道・公共用地 | 私有地 | |
|---|---|---|
| 根拠になる法律 | 道路交通法・道路法 | 民法(所有権・不法行為) |
| 実際に動く相手 | 警察・道路管理者・自治体 | 土地の所有者、依頼を受けた業者や弁護士 |
| 警察の役割 | 取り締まりと、撤去の前提になる措置 | 事件性の確認と通報記録。撤去はしない |
| 費用の負担 | 法律上は運転者・使用者・所有者の負担(持ち主が分からなければ道路管理者などが処理する) | 原則として土地の所有者がいったん負担する |
| かかる時間 | 手続きの段取り次第 | 所有者と連絡が取れるかどうかで大きく変わる |
この表の右の列に自分が立っていると分かった時点で、やるべきことは「撤去」ではなく「記録と所有者の特定」に変わります。順序を飛ばすと、あとで自分が責任を問われる側に回ることがあります。
放置車両の撤去に関する手順については、以下の関連記事に、ステップ・バイ・ステップ形式のガイドが用意してあるのでご覧ください。
放置車両の種類(放置された背景による11分類)
放置車両には背景毎の種類があることをご存知ですか?
穏便に解決するには、『その車が誰に、どんな理由で置かれたのか』を知ることが大切です。撤去が進まない理由は「なぜ放置車両が撤去されないのか」で解説しています。
ここでは、これから放置車両の問題解決に取り組む人が、法律に抵触することを避けるために押さえておきたい放置車両の種類を紹介します。不必要なトラブルに巻き込まれないための自己防衛策として、知識を身に着けておきましょう。
先に、11の種類と現場での見分けかた・最初にやることを一覧にしておきます。ここまで分かれば、警察に相談すべき事案なのか、自分で所有者を探す事案なのかの判断がつきます。見分けかたと初動は、当社が撤去の現場で使っている判断基準をまとめたものです(2026年9月現在・ヒキトリレンジャー調べ)。
| 種類 | 現場で気づく手がかり | 最初にやること |
|---|---|---|
| 盗難車 | ナンバーの曲がりや付け替えの跡、鍵穴の破損、車内が荒らされている | 触らずに警察へ。盗難届が出ていれば解決は早い |
| 失踪者の車 | 車検が切れたまま動かない、車内に生活用品が残っている | 警察へ。事件性の確認が先 |
| 事件加害者の車 | ナンバーがない・破損している、不自然な場所に置かれている | 触らずに110番。証拠品として押収されることがある |
| 事件被害者の車 | 車体の損傷、車内の異常 | 触らずに110番 |
| いやがらせ | 出入口をふさぐ位置に置かれる、繰り返し発生する | 警察へ相談し、日時と状況を記録する |
| その他の事件性がある車 | 見ただけでは判断がつかない | まず所轄の警察署へ相談する |
| 料金滞納者の車 | 契約書や利用記録が残っている | 契約内容を確認し、契約者本人へ連絡する |
| 故障車 | ボンネットが開いている、パンクしている、レッカーの跡がある | 警告文を掲示し、所有者を照会する |
| 事故車 | 損傷が大きい、部品が周囲に落ちている | 警察へ通報する。保険会社が関わることがある |
| レンタカー・カーシェア | 会社のステッカー、「わ」「れ」ナンバー | ステッカーの会社へ連絡すれば早い |
| 故人の車 | 長期間動かない、契約者と連絡が取れない | 相続人を探す。放置期間の記録を残す |
注意していただきたいのは、「最初にやること」のどれもが撤去ではない点です。種類の見当をつける目的は、警察が動く事案なのか、自分で進める事案なのかを切り分けることにあります。ここを間違えると、動くほど時間がかかります。
盗難車
放置車両の種類の中でも、コインパーキングや商業施設などの私有地内駐車場、公道や山林などに置き去りにされることが多いのが『盗難車』です。盗難車の場合、自動車の所有者が警察に盗難被害届を出していることが多いので、速やかな解決につながることが多いのですが、事件が絡んでいる場合や被疑者が事故を起こしていた場合などは複雑化しやすい特徴があります。
失踪者の車
失踪者が置き去りにした車は、所有者が失踪した本人なのか、親族なのか、知人や友人なのか(盗まれた車も含む)で、対処方法が変わります。失踪した人の安否にも関わるため、事件性があれば、警察が証拠品として回収することも少なくありません。
事件加害者(犯人)の所有車
何らかの事件の加害者が所有者になっている自動車の場合、誰かが放置車両として発見、その後に警察へ110番通報して初めて発覚することがあります。警察が捜査過程で、犯人の車両を発見した場合は、証拠品として押収されるので土地所有者が放置車両の撤去費用を支払う必要はないでしょう。
事件被害者の所有車
金銭・怨恨・偶発的トラブルなど、様々な理由で発生した事件の被害者が所有していた車両の場合、その人の自宅や事件現場、移動過程で放置車両化した自動車は重要な証拠品となるので警察が対応します。指紋や血痕など、捜査の重要資料となる場合があるので、放置車両を発見しても不用意に触らないように注意が必要です。
いやがらせ目的で置かれた車
いやがらせとして自動車を放置するという犯行に及ぶ者もいます。土地所有者個人や組織等への個人的な恨みなどが理由で、計画的な事件と衝動的な事件があると考えられ、被害にあったら自己解決するのではなく『まずは警察へ通報』してさらなる被害に遭わないようにしましょう。
その他、事件性がある車
放置車両には、事件性がある自動車があり、軽犯罪~重犯罪に至るまで車両をパッと見ただけではわからないようなリスクに直面することもあり得ます。そのため、放置車両を発見したら、まずは住所地を所轄する警察署に通報することが先決です。
自動車を放置した相手がわからないときは、まず張り紙で連絡を求めるのが一般的です。ただし当社の経験では、撤去の費用を心配するより先に、事件性がないかを警察に確認しておくほうが結果的に早く片づきます。
駐車場の料金滞納者の車
放置車両撤去サービスの依頼主として全国的に多数を占めるのが、コインパーキング運営会社、スーパーやデパートの駐車場(立体駐車場を含む)、高速道路や公共施設のパーキング管理組織、空港付近の長期利用型駐車場の管理会社です。
そのような、駐車場に自動車を放置する人は、駐車料金滞納者として扱われますが、私有地内で発生しており所有権が管理人にないために『解決に長期間を要することが多い』というのが実情です。
故障車
放置車両の中には、自動車の故障が発端となり、レッカー車の出動費用や修理費用を支払う能力がない人が所有する車を置き去りにするケースがあります。このように、故障して放置された車にも所有者がいます。本人の許諾なしに無断撤去したり、ましてや勝手に廃車処分してしまうと、罪に問われるおそれがあるので対応はプロに依頼しつつ、警察への通報も忘れないようにしてください。
事故車
事故車が放置車両になってしまう理由としては、「全損事故でレッカー代や破損物への弁済ができない無保険状態」「事故の責任を逃れるための現場からの逃走」「崖の下への転落」など、他にも理由が考えられます。
事故車であっても、所有権を持つ人がいるため、本人の許可なしに第三者が撤去や処分をすることは法に触れる可能性があるので専門家や警察のアドバイスを仰ぎましょう。
レンタカー・カーシェアの車
レンタカーが放置されてしまう理由としては、借り主や同伴者が急遽入院することになったり、何かしらの不慮の事態で車を止めた場所に戻れなくなったなどがあります。他には、支払い能力が無い人が借りて放置する場合や、外国人観光客による置き去りも発生しています。
レンタカーの場合、貸主であるレンタカー会社のステッカーが貼られているのが通常であるため、ネット検索を通じて連絡をとれれば早期解決しやすい点が他の放置車両と大きく異なります。ただし、アプリなどで個人どうしが車を貸し借りするカーシェアの車は、会社のステッカーが無いため、ナンバーから所有者を調べる必要があります。
故人の車
放置車両の中でも対処が大変なのが故人の車です。よくある事例としては、用事があり駐車場を利用したものの出先で緊急入院、そのまま亡くなってしまい放置状態になってしまうパターンです。他には、月極駐車場を契約していた本人が失踪し、追跡してみた結果、亡くなっていたなどもあります。
所有者が亡くなっている場合は、所有権を引き継ぐ相続人がいるはずなので、その人を探したり、誰もいなければ別の手続きが必要になります。なかなかに複雑なので、故人の車の扱いについては、下記の関連記事をご覧ください。詳細に解説しています。
こんな種類の放置車両は要注意
テレビ特番などでスクープされる、ゴミ屋敷のように所有者の私有地内に長年放置されている車両は、周辺の生活環境や安全に明らかな支障が生じていない限り、行政が代わって撤去することは難しいのが実情です。
関連情報
【場所別】放置車両を見つけた時の対処法
放置車両を撤去したいというご要望を受けた中で、実際に長期間の無断駐車、自動車の不法投棄が発生しやすい場所というのがあります。当社では、それぞれの場所別に異なる面が生じる対処法を個別に解説していますので参考にしてみてください。
このほか、廃墟・廃屋に車が置き去りにされたというご相談も寄せられています。
警察は対応してくれるのか
私有地に放置車両が発生したとき、多くの方が最初に考えるのが「警察に何とかしてほしい」ということです。しかし結論から言うと、警察が私有地の車を撤去してくれることはありません。それでも連絡しておく意味はあります。順に説明します。
「民事不介入」は条文ではなく、警察の責務の範囲から来ている
よく「民事不介入の原則という法律がある」と説明されますが、そう書かれた条文があるわけではありません。警察法2条1項は、警察の責務を個人の生命・身体・財産の保護、犯罪の予防・鎮圧・捜査、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持と定めています。続く2項は、警察の活動はこの責務の範囲に厳格に限られるとしています。私人どうしの財産上の争いは、そのままではこの範囲に入らないと考えられており、警察は立ち入らない運用になっています。
出典:e-Gov法令検索 警察法(第2条)。2026年9月7日確認。
裏を返せば、事件性があれば警察は動きます。盗難車、事件に使われた車、いやがらせが繰り返されている場合などです。ですから相談するときは「撤去してほしい」ではなく「事件性がないか確認してほしい」という切り出し方をしたほうが、話が早く進みます。
放置車両確認標章そのものには、車を動かす効力はない
黄色い放置車両確認標章は、駐車監視員や警察官が違法駐車を確認したことを記録し、あとで車の使用者に放置違反金の納付が命じられることがある旨を告知するものです。標章そのものに、車をどける効力はありません。標章が貼られたまま何日も動かない車があるのは、このためです。車の移動は、道路交通法51条で警察官などに別に認められた権限です。
出典:e-Gov法令検索 道路交通法(第51条・第51条の4第1項)。2026年9月17日確認。
また、標章は車の使用者・運転者・その車の管理について責任がある者以外が破損したり取り除いたりすることを道路交通法51条の4第2項が禁じています。土地の所有者であっても、勝手にはがさないでください。
それでも警察に連絡しておく理由
放置車両が置かれている土地や建物がある地域を管轄する警察署に通報しておくことは、撤去実現までのステップの最初として有効です。
これは、『通報した記録を残す』ことと『事件性の有無の確認』という2点を、一度の通報で同時に行うことができる点でも一石二鳥です。
とくに効いてくるのが前者です。「いつ警察に相談したか」という記録が残っていることは、あとで所有者と争いになったときに、こちらが順序を踏んで対応していた裏付けになります。
私たちヒキトリレンジャーでは、下記の記事内で、放置車両に関する通報や問い合わせ先、方法について解説していますので詳しくは、こちらをご覧ください。
放置車両を勝手に撤去すると、こちらが罪に問われるおそれがある
邪魔で迷惑な放置車両ですが、いくら被害者の立場だったとしても、放置された自動車自体にも「車両の所有者」がいて、しっかりした「所有権」があります。
「自力救済の禁止」は、条文ではなく判例で確立された考え方
権利を侵害されている側であっても、裁判などの法的手続きによらずに自分の力で解決することは、原則として認められていません。これを自力救済の禁止といいます。ただし、民法に「自力救済を禁止する」と書かれた条文があるわけではなく、判例で確立された考え方です。
最高裁判所は昭和40年12月7日の判決で、私力の行使は原則として法の禁止するところであるという趣旨を示しました。例外が認められるのは、法律に定める手続によったのでは権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能または著しく困難であると認められる、緊急やむを得ない特別の事情が存する場合に限られます。しかもその場合でも、許されるのは必要の限度を超えない範囲だけです。
出典:最高裁判所 第三小法廷 昭和40年12月7日判決(事件番号 昭和38(オ)1236「占有回収等請求」、民集19巻9号2101頁)。2026年9月17日確認。
「例外的に許される」という部分だけを見て、自分の状況は例外にあたると考えるのは危険です。判決が例外として認めるのは、裁判などの手続きを待っていては間に合わない、差し迫った場面であり、車が何か月も置かれているという状態は、通常これにあたりません。
勝手に動かすと、どんな責任を問われるおそれがあるのか
- 器物損壊罪(刑法261条):鍵やハンドルロックを壊した、タイヤを外したなど、車をわざと壊した場合。3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料
- 窃盗罪(刑法235条):車を自分のものとして持ち去った、解体・売却してしまった場合。10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
- 不法行為による損害賠償(民法709条):車の価値や車内にあった物の損害を、金銭で請求される
出典:e-Gov法令検索 刑法(第235条・第261条)、民法(第206条・第709条)。2026年9月7日確認。
実務でとくに問題になるのは3つ目です。値打ちが無さそうに見える車でも、所有者が後から「動く車だった」「車内に高価な物があった」と主張してくることがあります。そのとき写真も記録も残していなければ、反論する材料がありません。撤去より先に記録を残す理由は、ここにあります。
車をどけさせるための裁判の起こし方や、少額訴訟では撤去を求められない点は、私有地から放置車両を撤去する手順の記事で解説しています。
更に詳しく、法律的理解と、それでも撤去するための手順や注意点を確認できるよう、下記にこの部分の詳細解説を用意したのでご確認ください。
放置車両の悩みを解消する情報
当社が長年の経験から学んだ、放置車両の悩みを解消する捉え方や、実際に自分で対処できる範囲から業者に依頼する段階まで、トータルで理解できる情報を無料で公開しています。それぞれを記事単位で紹介していますのでご利用ください。
放置車両の撤去方法
放置車両を撤去したいけど、自分の状況に合う安全安心の方法がわからない人へ、私有地と公道に対応できる対処法を解説。
放置車両に貼る警告文
敷地内に置き去りにされた、不法な放置車両の持ち主に対して警告がしたい人へ、無料のテンプレートを配布中。
放置車両撤去の費用
放置車両を撤去するために必要な費用相場、業者に依頼してお得に廃車まで済ませる方法をレクチャーします。
放置車両を撤去できないのはなぜ?
法律が邪魔して、なかなか撤去できない放置車両について、撤去できない背景にある事情と対処法を解説します。
放置車両と駐車違反の違い
道路交通法の観点から放置車両と駐車違反の違いについて、かえってわからなくなっている部分を単純明快に解説。
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放置車両についてよくある質問
放置車両とは、何日から放置車両になりますか?
道路交通法の定義に日数の基準はありません。同法がいう放置車両は、運転者が車から離れていてすぐには運転できない状態かどうかで判断され、駐車時間の長さは条文に書かれていないためです。私有地の場合は原則として取り締まりの対象外なので、「何日から」という基準そのものが存在しません。実務では、警告文を掲示した日から動きがないことを写真と日付で記録し、放置されている事実を積み上げていきます。
私有地に放置された車を、警察は撤去してくれますか?
撤去はしてくれません。私有地の放置車両は民事の問題として扱われるためです。ただし、盗難車や事件に使われた車である可能性があるため、事件性の確認と通報記録を残す目的で、必ず所轄の警察署に相談してください。盗難届が出ている車であれば、そこで解決に向かうこともあります。
ナンバープレートが付いていない放置車両はどうすればよいですか?
所有者を調べる登録事項等証明書の請求には、ナンバープレートの文字・数字すべてと車台番号の下7桁が必要です。手数料は現在登録証明書が400円、詳細登録証明書が1,200円です。自動車登録番号と車台番号を記載できない場合は別途書類が必要になるため、運輸支局等に問い合わせるよう案内されています。軽自動車の場合は、軽自動車検査協会で検査記録事項の証明を請求します。この段階でも車内に立ち入ったり施錠を外したりしてはいけません。
出典:国土交通省 自動車検査登録総合ポータルサイト 登録事項等証明書の交付請求について。2026年9月7日確認。
放置車両確認標章を、土地の所有者がはがしてもよいですか?
いけません。道路交通法51条の4第2項は、車の使用者・運転者・その車の管理について責任がある者以外が標章を破損し、汚損し、または取り除くことを禁じています。なお、標章が貼られているということは、警察がその場所を道路交通法上の「道路」と判断したと考えられます。私有地であっても、一般交通の用に供する場所であれば道路にあたります。私有地だと思っていた場所に標章が貼られた場合は、所轄の警察署に土地の扱いを確認してください。貼られた側の対応は放置車両確認標章が貼られたときの違反金と点数にまとめています。
所有者が亡くなっている場合はどうなりますか?
車の所有権は相続人に引き継がれるため、相続人の同意を得たうえで引き取ることになります。相続人が複数いる場合は全員の同意が必要になることがあり、相続人がいない、または全員が相続を放棄している場合は、家庭裁判所の手続きが関わります。所有者が亡くなった放置車両の扱いで詳しく解説しています。
まとめ
放置車両という言葉には、二つの顔があります。道路交通法が定めているのは公道の駐車違反のほうで、運転者が離れていてすぐに動かせない状態の車を指し、日数の基準はありません。これに対して私有地に置き去りにされた車は、原則として法律上の「放置車両」にはあたらず、標章も貼られず、放置違反金の対象にもなりません。同じ言葉でも、動く相手が警察なのか自分なのかが正反対に変わります。
私有地の場合、やるべきことは撤去ではなく、記録を残し、種類の見当をつけ、事件性がないかを警察に確認してもらい、そのうえで所有者を特定する、という順序です。腹立たしくても順序を飛ばさないほうが結局は早く終わります。先に手を出せば、器物損壊や窃盗の罪、損害賠償という形で、立場が逆転するおそれがあります。自力救済が原則として許されないのは、条文ではなく判例で確立された考え方であり、例外が認められるのは切迫した場面に限られます。
実際には、所有者と連絡がついて承諾が取れれば、引き取り作業だけで片づくことも少なくありません。車両の引き取りは着手金15,000円からで、鍵が無い場合やパンクしている場合に作業料金が加わります。料金表は放置車両の撤去&廃車サービスのページでご確認ください。まずは車の写真を日付が分かる形で撮り、自分がどの段階にいるのかを確かめるところから始めてください。判断に迷うようでしたら、無料相談をご利用ください。


































































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エリア別ページには、査定や引き取りが可能な「市区町村」情報のほか、廃車費用や流れの詳細をご確認いただけます。